恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】


ちくっと、、無邪気なフリで一回口に出しとけば牽制になるかなー、て。


「ははは。ずばずば言う子だよね。なんで営業がいいの?」


それにしても、足立さんもだけどこの田倉さんという人も、人あたりがいいと言うか話してて壁を感じない。
それに加えて、どうして営業がいいかなんて聞かれたのが初めてだったもので。


「子供の頃、家に布団の押し売りが来たんです」

「は? 押し売り?」


そこから私は、母が布団の押し売りに騙されて後で父に怒られて泣きながらクーリングオフしたことと、その時の営業のぺら口が凄まじかったことを。


東屋さんが戻ってくるまで、延々と自分のペースで熱く語ってしまった。


「最初は19,800円って言ってて現物持ってきたら、いきなりローンの申込書出されて、一か月19,800円の十回払いって言い始めたんです!
だけど、その時には母はすっかりその布団に魅了されてて、それくらい見事なセールストークだったんです!」


という話を、田倉さん相手に力説している最中だった。
東屋さんが戻ってきて呆気にとられた顔を向けられる。


「随分盛り上がってますね」

「ははっ。一花ちゃん面白い子だね」

「す、すみません。私、変なことばっかり……」

「いやいや。まだ話してたいくらいだよ」

「それは、また後程。すみません、田倉さんご確認したいことが」


田倉さんに対しては美麗な営業スマイルを崩さない。
たまには、私にもその営業用で構わないから笑ってもらえたらなー……なんて願望は封印して、そんなことより今東屋さん、なんて言った?


後程ってどういうこと?

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