社内公認カップルの裏事情 〜ヲタクの恋は攻略不可能?〜
「……まじか」
ぼそり、と誰もいない給湯室に言葉を漏らした。
島田さんの言った〝この間の飲み会〟というのは、恐らく先週末に行われた飲み会で間違いない。
私と真樹は、〝二人で出かける予定を元々入れていた〟という理由をつけて、飲み会には参加しなかった。まあ、本当の不参加の理由は〝ゲームのイベント参加をするため〟だったのだけれど。
「はぁ」
清水が島田さんにまで私を好きだと未だ公言していることに、私は大きな溜息を漏らした。
清水に関しては何度も断っているのに、ここまでくるとどうしていいか分からない。
フリーだった少し前なら仕方がないのかもしれないけれど、今の私は、真樹と付き合っていると公言しているのに。
「何溜息なんか吐いてんの」
「わっ!……な、何よ。突然驚かさないでよね」
突然背後から声がかかり、手元のトレーを落としかけたけれど、なんとか一命をとりとめた私は声のした方を見た。
給湯室の入り口で口角を上げている真樹を睨みつけると、私は、再び手元のトレーに視線を落とした。
危うく、お茶を無駄にした挙句にトレーの上のお茶で床が水浸しになるところだった。
まったく、落としていたらどうするつもりだったんだ。と思いながら、入り口付近に立つ彼の横を通り過ぎようとした、その時。