社内公認カップルの裏事情 〜ヲタクの恋は攻略不可能?〜


「……まじか」

ぼそり、と誰もいない給湯室に言葉を漏らした。

島田さんの言った〝この間の飲み会〟というのは、恐らく先週末に行われた飲み会で間違いない。

私と真樹は、〝二人で出かける予定を元々入れていた〟という理由をつけて、飲み会には参加しなかった。まあ、本当の不参加の理由は〝ゲームのイベント参加をするため〟だったのだけれど。


「はぁ」

清水が島田さんにまで私を好きだと未だ公言していることに、私は大きな溜息を漏らした。

清水に関しては何度も断っているのに、ここまでくるとどうしていいか分からない。

フリーだった少し前なら仕方がないのかもしれないけれど、今の私は、真樹と付き合っていると公言しているのに。



「何溜息なんか吐いてんの」

「わっ!……な、何よ。突然驚かさないでよね」


突然背後から声がかかり、手元のトレーを落としかけたけれど、なんとか一命をとりとめた私は声のした方を見た。

給湯室の入り口で口角を上げている真樹を睨みつけると、私は、再び手元のトレーに視線を落とした。


危うく、お茶を無駄にした挙句にトレーの上のお茶で床が水浸しになるところだった。

まったく、落としていたらどうするつもりだったんだ。と思いながら、入り口付近に立つ彼の横を通り過ぎようとした、その時。


< 11 / 122 >

この作品をシェア

pagetop