社内公認カップルの裏事情 〜ヲタクの恋は攻略不可能?〜
「そのステージあともうちょっとでクリアでしょ? それ終わったら一緒に食べよう」
そう一言だけ残した彼は、すうっと引戸を閉めてリビングへと戻っていく。
私と同じく根っからのゲームオタクな彼は、今朝、ゲームのイベントがあるからそれをしてから帰ると言っていた。
ふと時計に目を移すと、時計の針は19時半を指していて、私は意外にも早く過ぎていた時間に目を丸くして驚いた。
「ご飯、温めるね」
あまりご飯を待たせるのもどうかと思った私は、しっかりゲームのデータがセーブされていることを確認すると部屋を出た。
リビングのテーブルの上に置かれた煮物と炒め物を温め直し、テーブルの上に戻す。そして、真樹が準備をしてくれたご飯とお味噌汁がテーブルに並ぶと、私達は二人両手のひらを合わせた。
いつものように「いただきます」と、二人合わせて言うと、私達は黙々とご飯を食べ進める。
いつもならここで、お互いがしているゲームや新作ゲームの話題になるはずだけど、今日は私の口からはそんな話はできそうにない。
むすっとしたままでご飯をゆっくり口に運び、もぐもぐと口を動かす。そんなことをただ繰り返していると、彼の方から口を開いた。