社内公認カップルの裏事情 〜ヲタクの恋は攻略不可能?〜
「……別に。何も怒ってない」
そう呟くように返し、私は箸を動かし続ける。そんな私を見て「怒ってるじゃん」と言って笑った彼は、それ以上何も聞かずにご飯を食べ進めた。
〝怒ってない〟と言っておきながら、明らかにむすっとした表情を浮かべているであろう私の手料理。それを真樹は「美味しい」と言って食べ進める。
約五年前、転職活動を経て今の会社にやって来た私と、有名大学を卒業して新卒として入社して来た彼。
同い年で、同期。だけど、仕事は誰よりも出来て人当たりも人一倍良い人気者の彼と、すべてが並かそれ以下の私とでは大きな差がある。
私は、人当たりが無駄に良い人気者な彼が苦手だったし、性格だって、いつだって大人な対応ができる彼と、子供な私とではどう考えても違う。だけど、そんな彼と私が今のような状態に至ったキッカケは、私たちの唯一の共通点〝ゲーム〟だった。
偶然オンラインゲームで知り合い、すぐに意気投合した私達が実際に会う約束をしてみると、待ち合わせ場所に現れたのが真樹だった。
その時の衝撃と言ったら、もう言葉では簡単に表現できないけれど、話してみるとやはり私達二人の価値観は似ていた。