社内公認カップルの裏事情 〜ヲタクの恋は攻略不可能?〜


「あ、死ぬ!死んじゃう!ああ!もう!まきろん早く!」

「は⁉︎ だから単独行動控えてって言ったじゃん!本当、みぽりんそういうところある……って、あ、やば。打たれた」

「え、嘘!」

「まじ。あ、死んだ」

「えー!待って、あと一組倒せば一番だったのに!何やってんのよ!」


真っ暗な部屋に光るのは、二つのスマートフォンの画面だけ。

暗闇の中でその画面だけを見つめ、真剣に言葉を交わしている私と真樹は一斉にスマートフォンを放り投げるとその場に倒れこんだ。


「あー、もう!悔しすぎる!」

「まじみぽりん言うこと聞いて」

嘆く私の側で、同じように嘆いている真樹。彼と私は、ゲームのことで熱くなると自然に〝みぽりん〟〝まきろん〟という呼び方に変わる。

オンラインゲームで出会った私達は、今になってもつい、そのオンライン上で使用している名前で呼びあってしまうのだ。


「何よ!だって、あっちの方が見晴らしがいいと思って……私には私なりの考えがあったの!」

あまりにも悔しそうにしている真樹に、私の方が悔しくてそう言い放つ。すると、彼は暗闇の中で「はぁ」と溜息をつくとスマートフォンを探り手に取った。


「もう一戦。リベンジしよ」

そう言った真樹に、私は深く一度頷いた。


「次は、作戦Aで。みぽりん。何度も言うけど、極力単独行動は控えるように」

「……承知しました」

「素直でよろしい。それじゃあ、先に武器だけとっとと集めよう」

スマートフォンの画面をタッチして操作し、私と真樹は再び一番を目指して戦闘に励んだ。



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