社内公認カップルの裏事情 〜ヲタクの恋は攻略不可能?〜
2.直球アプローチ
「ちょ、河合さん、早く」
「分かってるってば!あ、待って、社員証カバンに入ってない!」
「もう、ほら、早く取ってきて!本当に、このままだと遅刻するから」
朝からバタバタとしている私と真樹。
昨日、結局真樹と深夜二時までゲームをし続けてしまった私は、目覚ましの音では起きれず、いつもなら既に準備の済んでいるはずの8時20分に起床してしまった。そこから20分で準備を済ませ、定時の9時までは残り20分。
自宅から会社まではいつも15分程度はかかってしまうことを考えると、真樹の言う通り、本当に遅刻ギリギリだ。
「俺も必死で起こしたのにさ。河合さん、爆睡で全然起きないんだもん」
「はあ!? それは、あんたのせいじゃない!もう! っていうか、勝手に寝顔見ないでくれる!?」
「はいはいはい。ほら、とりあえず靴履く。もう45分だから急いで」
「えっ!?」
既に完璧に準備を済ませた状態で腕時計を見ている真樹。私は、彼から今の時刻を伝えられると、慌てて仕事用のパンプスを履いて家を出た。
二人並んで家を出ると「早く早く」と急かす真樹に続いて、私も必死で早歩きをした。
「河合さん、遅い」
「あんたが早いんでしょ!これでも精一杯走ってる」
私の少し先を歩き、振り向きながら私を急かす彼に私は若干腹を立てながら返事をした。
ただえさえ昔から運動が出来ないタイプだというのに、それに加えて、5センチのヒール。こんなの、早く走る方が無理に決まっている。