社内公認カップルの裏事情 〜ヲタクの恋は攻略不可能?〜
「美帆ちゃん、今日は参加してくれてありがとうね!嬉しい」
「あ、いえ。全然大丈夫ですよ」
憂鬱な気持ちを積もらせていると、あっという間に飲み会の金曜日はやって来た。
私の横にやって来た島田さんが、いつもの笑顔でそういうと、私も必死で笑顔を作り返した。
「今回は、深川くんも来てくれてるから来てくれたの?」
笑顔でそう問いかけてくる島田さんは、まるで、〝いつもは呼んでも参加してくれないのに、どうして今日は来たのか〟と言っているように見えた。
いつも声をかけてもらっても、二つ返事で断りを入れていた私が、一体、どういう風の吹き回しでここにやって来たのか。それが気になるのだろう。
「あ、はい。まぁ、そんなところです」
いつもと同じように愛想笑いを作り上げながら、視線をテーブルの奥の方へ向けた。
個室の中心に並ぶ横長のテーブル。その入り口付近の角に座っている私から、丁度対角になる場所でビールを飲んでいるのは真樹。
今日も、いたって通常運転で愛想を振りまいている彼を視界に入れた私は、自然と尖った唇にウーロン茶の入ったグラスを運んだ。
あの、真樹と言い合いになってしまったあの日から、私と真樹は家ではろくに話をしていない。真樹の方は気にしていないのか、社内では、いつもどおり話しかけてくるし、仲良しカップルを演じているけれど、私は正直、どうしていいか分からなくてぎこちなくなる。
仕事内容の話もそうだけれど、家に帰れば真樹とゲームもしたいし、話したいこともある。だけど、どうも真樹にうまく話しかけられないのだ。