社内公認カップルの裏事情 〜ヲタクの恋は攻略不可能?〜
これだけの人数がいる飲み会というのは、必然的に席の近い少人数で話題を共有することになる。
そして、島田さんが企画する飲み会では、若い男女が集まるため、段々と二人一組のペアが出来ていく。
やっぱり、また合コンのように流れていくこの飲み会に疲労感を覚えながら、私の意識は段々ふわふわとし始めていた。
「やだー、深川くんってやっぱり噂どおり優しい」
ぼんやりとした意識の中で、女子の甲高い声に反応して部屋の奥を見る。すると、そこには可愛らしい受付の女の子と二人で話している真樹がいた。
普通に話しているだけだということは分かっている。受付の彼女だって、私と真樹が交際しているという話は絶対に耳にしているだろうし、実際に、私と真樹が仲良く出社しているところだって見ているはずだ。
それなのに、妙に真樹に詰め寄って猫撫で声を出している彼女は、真樹に気があるようにしか見えない。そして、そんな彼女に嫌悪感を抱く自分まで出てきてしまって、自分の思考がよく分からなくなってくる。
「河合? 大丈夫か?」
「うん、大丈夫」
ちょっと、飲みすぎたのかもしれない。なんて思った私の目の前にはまだ半分しか飲んでいないカクテルがひとつ。
まだカクテルを二杯目も飲み終えていないというのに、胸の奥がグラグラ揺れて、むしゃくしゃするほと気持ちが悪い。