社内公認カップルの裏事情 〜ヲタクの恋は攻略不可能?〜
「やっぱり酔ってるだろ。顔色も良くないし、体調でも悪い?」
心配そうに私の顔を覗き込んだ清水が、手のひらを私の額に当てた。
「え、ちょっ、清水?」
「熱はなさそうだな」
「う、うん。ちょっと悪酔いしただけだと思うから大丈夫」
ゆっくり離れて行く清水の大きな手のひら。
私は挙動不審に周りを見渡してみたけれど、幸いにも周りのみんなはそれぞれの話に夢中のようで、誰も私と清水の方は見ていなかった。
安堵の息を小さく漏らした私は「ちょっとお手洗い行ってくる」と小さく呟くように言うと、重たい足を運び女子トイレへと向かった。
「何、あれ」
洗面台の前に立ち、一人呟く。
恥ずかしながら、もう5年も彼氏のいない私。あんなふうにして異性に触れられたのは、その5年前の彼氏以来だった。
不覚にも高鳴ってしまう私の心臓が、その免疫力の無さを物語っている。
「……戻ろ」
乱暴に手を洗い、その冷えた手で両頬を冷やす。
ほんの少しだけ酔いが覚めたような気がした私は、女子トイレの扉をゆっくり開いた。───すると。