社内公認カップルの裏事情 〜ヲタクの恋は攻略不可能?〜
「全然大丈夫じゃないじゃん。元気もなさそうだし、帰る? 深川はまだ飲んでるみたいだし、もし帰るなら送るよ」
壁に手をついて揺れる視界をゆっくり清水まで動かす私。
そんな私の視界に清水の右手が差し出されると、それと殆ど同時に清水の背後に人影が現れた。
「美帆は俺が送るからいいよ」
清水の背後から現れ、口角を上げながらそう言ったのは、受付の女の子と楽しそうに話していたはずの真樹。
「……深川」
真樹を見た瞬間、バツの悪そうな表情を浮かべると苦笑いした清水に、真樹は再び笑顔のままで口を開いた。
「美帆が心配かけちゃったみたいでごめんね。あとは俺に任せて」
「えっ」
いつも通り、人当たりの良い笑顔を浮かべている真樹。
やっぱり、真樹のこの笑い方は嘘っぽくみえるし、苦手だなあ。なんて呑気に考えていると、突然、私の腕を握った真樹が強引に手を引いて歩き出した。