社内公認カップルの裏事情 〜ヲタクの恋は攻略不可能?〜
3.私の利用価値
「嫌、嫌だ!待って、私を置いて死なないでよ!まきろーーーーーん!!!」
両手にしているスマホに向かって大声を上げた、土曜の昼間。
ソファに正座をしている私の隣に腰をかけている真樹が、両手で耳を抑えるとあからさまに嫌そうな顔をした。
「みぽりん、うるさい。あとはみぽりんの頑張りにかかってるんだから、俺の死を無駄にしないように頑張って」
「……わ、分かった。あんたが庇ってくれて守られたこの命、大事にす……って、あぁぁ!打たれた!死んだ!やばい!まきろん!」
「はぁ⁉︎ 俺の死、無駄じゃん。ほんと、みぽりん流石に弱すぎだわ」
「はぁ⁉︎ だって、あんたが先に死ぬからでしょ⁉︎ 一人で不安なんだもん、仕方ないじゃない!」
「はあ、庇うんじゃなかった」
「何⁉︎ 酷い!でもね、こっちは庇ってくれなんて頼んでないんだから!」
ぶうぶうと文句を並べながら、引き続きスマホを操作し続ける。
「はは、可愛げないな」
感謝して欲しいところなんだけど、と付け足した、隣でスマホを操作している真樹の言葉に、私は眉間にしわを寄せた。
「うるさい」
ぼそっと呟き、またゲームに没頭する。
真樹に言われた言葉は、五年前に付き合っていた彼氏にも言われたことがあった。
別れを告げられた日。甘え下手な私のことを、彼は「美帆って、顔はいいのに可愛げがないよね」なんて言って、最後だからなのか、遠慮もなく私の心に傷をつけた。
もう五年も前のことだ。別に、今更古傷が痛むわけではないけれど、少しくらいは気になる。
ゲーマーでヲタクなのも理由の一つかもしれないけれど、こんなだから、私って彼氏ができないんだろうな。