社内公認カップルの裏事情 〜ヲタクの恋は攻略不可能?〜


「……ん」

重たい瞼を指先で擦り、ゆっくり開く。三角座りをしていたはずの私は、どうやらソファに横になって寝ていたらしく、身体には私のものではない毛布がかかっていた。


「あ。河合さん、起きた?」

「……真樹、帰ってきてたんだ」

声のした方を振り返ると、そこにはウーロン茶の入ったグラスを手にしている真樹がいた。

お風呂上がりなのか、髪が少し湿っているように見える。


「うん。帰ってきて、今、お風呂はいったところ」

「……そっか」

「帰ってきたら、ソファで三角座りして河合さん寝てるからびっくりした。ここはベッドに移動させてあげるのが男として正解だと思ったんだけどさ、ヲタクの俺にそんな力はなくて諦めた」

ヲタク乙、と付け足してへらへらと笑っている真樹はいつも通り何も変わらない。

だけど、私の胸のモヤモヤはなぜか一ミリだって晴れていない。一体、彼はどうしてフジタさんとご飯に行ったのか。そのご飯に行って、どうなったのか。それが気になって仕方がない。


「……河合さん?」

「え、なに?」

「いや、何か言いたげな顔してるな〜と思って」


真樹は口角を上げて、まるでこちらの気持ちを見透かしているみたいな余裕の表情を浮かべている。

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