社内公認カップルの裏事情 〜ヲタクの恋は攻略不可能?〜
「……あんたこそ、掟破りなんじゃないの」
「え?」
「フジタさんと二人でご飯なんか行って、そんなの、規約2条違反じゃんって言ってんの!」
苛立ちが抑えきれず、つい声を上げた。同時に顔を上げて真樹を見ると、彼は何故かきょとんとした顔をしていた。
「……いや、〝二人で〟なんて、俺言ってないけど」
「え?」
「フジタさんと、もう一人の受付の……あー、名前忘れた。まあ、その子と、営業のマルオと、先輩と五人で行ったよ」
「え?」
「え? じゃないでしょ。これ、勝手に河合さんが勘違いしてるだけだから」
「勘違い……?」
思い返してみれば、確かに、真樹の口から〝二人で〟なんていう言葉はたったの一度も出てきていない。
完全に、私の勘違い。それに私は勝手に怒って、彼に八つ当たりをしてしまったらしい。
なんだか急に恥ずかしくなって、八つ当たりをされた真樹には申し訳なくなった。だけど。
「それなら、どうしてあの時〝フジタさん〟って名前しか出さなかったのよ!そっちが勘違いさせるような言い方したんじゃん!」
勘違いさせる真樹も少なからず悪いだろう、なんて思ってしまった私はまた大人気なく彼に反抗し始めた。
「いや、確かにそうだけど……あれ、なに? まさか河合さん、ヤキモチでも妬いちゃった?」
「は……はあっ⁉︎ ふざけないで!どうしてあんたのことでヤキモチ妬かなきゃ行けないのよ!別に、あの掟さえ無ければ、女の子とご飯くらい好きに行ってくれたっていいんだから!」
ソファから立ち上がり、自分の部屋へと一歩踏み込むと、私は部屋の扉を勢いよく閉めた。