社内公認カップルの裏事情 〜ヲタクの恋は攻略不可能?〜
「大体、俺が会社でゲームの話ししてないって、河合さんもしてなかったでしょ。かなりモテてるみたいだし、とても干物オタクには見えなかったけど」
「そりゃあ、わざわざ言うことでもないし、会社ではそれなりに平凡に過ごしたいから言わなかったのよ」
「ふうん。〝モテる〟って言葉は否定しないんだ」
「なっ!別に、そんなわけじゃないけど、だって……否定してもしょうがないじゃない」
事実なんだし、と小さく付け足す。その私の一言に、彼は大きく口を開けて笑い出した。
「正直で宜しい」
そう言うと、歯を見せて笑った深川。なんとも言えない清潔感のある爽やかな表情と整った顔立ち。苦手意識のある私でも少しくらい心を動かされる程度には綺麗な顔立ちをしている彼は、もちろん、モテる。世に言うイケメン枠には必ず入るだろう。
「自分だってモテてるくせに」
ため息混じりに私が呟くと、彼の笑顔は徐々に消えていった。
「いや、でもさ。河合さんなら気持ち分かると思うけど、いくらモテてもしょうがないでしょ? 俺が好きなのはゲームなんだよね。ゲームが恋人な訳だし、他の女にわちゃわちゃ言い寄られるのも迷惑。俺は、ゲームに好かれなきゃ意味がないわけ。まあ、そんなこと言ったって誰も理解しないだろうけどね」
ため息混じりに熱弁する彼。言っていることはハタから見ればただのオタクな発言。だが。
「激しく同意するわ。その意見」
私は、まきろんのこういうところが好きなのだ。こういう、私と同じ意思を持つところが。
「いやあ、つくづくみぽりんとは気が合うわ」
苦手意識しかなかったはずの彼の正体が、私にとって一番好感の持てる人間だった。
ここから、私達の距離は思わぬ方向へと縮まることになる───。