社内公認カップルの裏事情 〜ヲタクの恋は攻略不可能?〜
清水と別れ、真樹と住むマンションに入る。3階まで重たい足取りで階段を上がり、305号室の前で立ち止まった。
「……げ」
左腕の腕時計を見てみると、時刻は夕方の八時前を指していた。
思っていたよりずっと過ぎてしまっていた時間につい声を漏らすと、目の前にあるドアノブが勝手に動き出した。
───ガチャッ
「……遅いんだけど」
開いたドアの向こう側から顔を覗かせたのは、何だか少し機嫌の悪そうな真樹。
定時でまっすぐ帰ってこいと言われたたいうのに、流石にこれは遅過ぎたか。
「すみません」
ぼそっとつぶやくようにして謝ると、私は先に中に入って行った真樹に続いてリビングへと向かう。
何も言わない真樹の背中をただ追いかけるようにしてリビングに入った。すると。
「えっ?」
キッチンカウンター前のテーブルにはショートケーキがワンホールと、恐らく真樹の手作りであろうオムライスとサラダが並んでいた。
ショートケーキの中央に置かれているチョコレートには〝お誕生日おめでとう みほ〟と書かれている。
「河合さん、お誕生日おめでとう」