社内公認カップルの裏事情 〜ヲタクの恋は攻略不可能?〜

なんだか少し照れくさそうにしてそう言った真樹の一言でやっとハッとした私は、慌ててカバンの中からスマホを取り出す。

案の定、スマホの画面には〝9月11日(火)〟と私の誕生日が表示されていた。


「うわ」

自分の誕生日のことをすっかり忘れていた自分と、また一つ歳を重ねていたという事実につい声を漏らす。

そんな私の様子を見てそれを察したのか、目の前の真樹は「忘れてたんだ」と呟いて笑った。


「いや、流石に今まで自分の誕生日を忘れることはなかったんだけど……今年は本当に忘れてた」

歳だなぁ、と呟いて髪をかく。すると、ふっと口角を上げて笑った真樹がケーキとオムライスが並ぶテーブルの前に腰をかけて私を手招きした。


「頑張って作ったから、食べてよ」

「うん。分かった。食べてあげる」

「なんで上から」

「だって、真樹料理苦手じゃない」

「なにその決めつけ。心外だなあ。俺だって、やればできるんだから」

ちょっとムキになって言い返してくる彼を見て笑いながら腰をかけ、両手を合わせた後料理が苦手なはずの真樹の手料理に手を伸ばす。

スプーンで一口ぶんオムライスをすくい、大きく開けた口にそれを運ぶ。

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