社内公認カップルの裏事情 〜ヲタクの恋は攻略不可能?〜
「……美味しい」
ぼそりと小さく呟き、次の一口を口内に放り込む。すると、向かいの真樹は満足気に口角を上げて笑った。
「そういえば私、真樹に誕生日教えたっけ」
まさか、自分ですら忘れていた誕生日を真樹に祝ってもらえるなんて思いもしなかった。だけど、それ以前に私は真樹に誕生日を教えた覚えもない。
どうして真樹が私の誕生日を知っているのかと、今更ながら疑問に思い問うと彼はいつのまにか平らげていたオムライスの目の前で両手を合わせた。
「教えてもらってないよ。だけど、ゲームのアカウント〝miporin0911〟じゃん」
「えっ、それだけ?」
「普通に考えたら0911って、誕生日じゃない?」
「いや、そうだけど……そんな単純な考え方で外れたらどうするの」
一か八かでこんなお祝いを準備するなんて、怖いもの知らずもいいところだ。
「外れたらその時はその時ってことで。まぁ、でも、河合さんってそういうところは単純そうだからパスワードとか全部誕生日の0911にしてそうだよね」
怖いもの知らずの彼に感心していると、私をバカにするかのように小さく笑った真樹がそんなことを言い出した。
誕生日をアカウントに入れるという考えが単純だと言い出したのは私だが、彼から〝単純〟だと言われるのが癪だった私は何か言い返してやろうと思った。だけど。
「お、図星か」
「なっ……」
彼の言う通り、スマホのパスワードも、カード類のパスワードも全て誕生日にしている私は何も言い返せない。