「私にだって好きな人くらいいる」
SIDE椿


「はっ?だって椿も俺のこと嫌いでしょ?」 



ガヤガヤとうるさい食堂で百瀬の声を聞き分けられたのは奇跡だった。


こんな奇跡起こしたくない。


彼の声を聞き分けられる耳と、彼の姿をすぐに見つけられる視力の良さが今はただただ憎い。


「……はぁ………」


自分の名前は少し離れていても聞き取れてしまう。

ましてやそれが好きな人の声なら。


「…瀬くん、……け、だよ!」


「えぇ?だって、本当のことだよ」



他学部の女子に囲まれてヘラヘラ笑う男に苛立ちがつのる。
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