名前で呼んでよ。
「はぁ…。ほら、言えって。」
「…や、やだ。」
「名前で呼んでやるから。言えって。」
悠希はそう言って、私の頭をぽんぽん、と撫でた。
「ほんとに…?」
「嘘はつかない。」
「他の子は名前で呼ぶのに、私のことは名前で呼んでくれないから…。」
私がそう言うと、上からくすくすという笑い声が聞こえてきた。
「な、なによ。」
「お前、それで泣いてたの?」
悠希はそう言うと、もっと大きく笑い出した。
「う、うるさい!笑いすぎ!」
「可愛いことで泣くのね、意外と。」
悠希は「はい、もう泣かない」と言って拭っても拭っても止まらない涙にハンカチを貸してくれた。