だからそれは、愛じゃない。
もう耐えられない、限界な心。
結局、待てども待てども、朱里は部屋から出てきてくれなかった。
『鶴橋くんは関係ないから余計な事言ったら許さない』と言われてしまった手前、もう何も言う事ができなかった。
次の日、いつも通り一緒に行こうと家を訪ねても、先に行ってるし、学校で挨拶しようにも話しかけようにも、目さえ合わせてくれない。
………完全に避けられていた。
朱里は俺の事、キライになったんだろうか。
ふと、良太の顔が浮かぶ。良太は受験まで数日を切ってた為、こんな相談をしている場合ではない。
だから友人の田中に朱里が好きな事を打ち明けた。田中なら相談しても大丈夫だと思った。
やっぱりといった感じで帰ってきた返事は、
「………いや、無理じゃね。嫌われてんじゃね」
完全に俺を否定するアドバイスだった。
「そうだよな………」
分かってはいたけど半笑いになるしかなかった。
……ああ、ツラい。思っていたより心にきた。
「もう諦めて違うヤツ好きになれよ」
さすがに鶴田が彼氏だなんて、言えなかった。朱里から口止めをされていたし、『朱里に彼氏がいる』なんて言ったら田中は相談さえも乗ってくれない気がしたから。
”朱里の事が好きだけど、目さえ合わせてくれないし、話もしてくれない”
――という事だけ相談した。