だからそれは、愛じゃない。




 母さん達にバレないように朱里を俺の部屋に連れて行き、下からこっそり救急箱を持って部屋まで戻る。



 消毒液でガーゼを濡らし、朱里の唇から出てる血をゆっくりと拭いていく。


「…………………………」



 朱里は落ち着いたのか、泣き止んでいるけど、茫然と俺の胸あたりを見ていた。



 ………いや、正確には一点だけを、ただただ眺めている状態だった。


 俺と目を合わせようとしない。



 まだ話したくないよな……と思いながらも、


「朱里………何があった?」


こんな酷な事聞いてほしくないってのは分かってる。


 だけど、どうしてこんなにボロボロなのか知りたかった。


 ……一刻も早く、知りたかった。
 イラ立つ原因を突き止めたかった。



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