だからそれは、愛じゃない。




 朱里はゆっくり口を開き、

「転んだの………」


消えるような声で呟いた。


「こ、転んだって………」



 転んでこんなにボロボロになるワケがない。


 ……いや、万が一こんな風になるまで転んでも、こんなに精神状態が病んでる事はまず……ない。



 明らかに嘘をついていると思った。


「転んでないんだろ?? 何があった?? 鶴田か?」



 鶴田かもという、俺の憶測で疑うのもどうかと思ったけど……アイツが、朱里を殴ったんだと思った。



 アイツはそういう事を、しそうな要素をいくつも持っている。



 グッと手に怒りを込めて、朱里の返答を待つ。



朱里は泣きそうな顔をして、

「……………………違う」


と否定してきた。


 ウソを言ってる事はバレバレだった。間が空きすぎている。目が泳いでいる。



 ……………鶴田だ。アイツが朱里をこんなボロボロになるまで殴ったんだ。


 ……………許せない。



 絶対に許さない。


 ……………怒りだけが、どうしようもなく込み上げてくる。鶴田を朱里と同じ目に遭わせてやりたいと思った。


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