だからそれは、愛じゃない。



 いてもたってもいられなくなりスマホを取り出す。


『朱里、ボロボロになって帰ってきた。鶴田が朱里を殴ったらしい』


――こう、良太にLINEを送る。



 だけど忙しいのか、すぐに既読にはならなくて、返事が来るまでの間、放心状態の朱里をゆっくり手当てする。



「朱里、氷タオルで頬冷やせ。腫れを押さえないと」


「………うん」



 ゆっくり朱里の頬に氷タオルを当てていると、


『朱里さんが殴られたって言ったの??』


――良太から返事が返ってきた。


 言ってはないけど……朱里を見てれば聞かなくても分かる。



「朱里、良太にお前がボロボロになってる事話すからな」


「………"お前"って言わないで………」



 俺の話よりも、俺の発した単語を拾ってはポロっと涙を流し始めた。


………こんなの、朱里の口から殴られたって聞かなくても、もう鶴田が殴ってるって確定だろ………


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