だからそれは、愛じゃない。




「もう殴ったりしないから。本当にごめん」



 謝るなり、私にゆっくりと抱きついてきた。



「………………………………」



 いくら謝ったって、私の心の傷は消えない。


 謝ったからって、簡単に今まで通りに戻れるはずがない。


 鶴橋くんに私の気持ちが分かるワケない。
 どんなに痛かったか、苦しかったか。
 ……………………どんなに、怖かったか。



 ………殴る前に少しくらい考えてほしかった。


「俺には朱里だけなんだ。お願いだから離れないで………」



 ”朱里だけ″
 その言葉は今まで散々聞いてきた。


 だから私は見放す事ができなかったんだ………


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