だからそれは、愛じゃない。
しばらく沈黙が続いた後、私に抱き着いていた体をそっと離し、
「朱里、俺を殴ってくれ」
と、お願いしてきた。
『朱里だけが黙って殴られるなんてイヤだ』と、まったく祐樹らしい事を言い出した。
何を言い出したかと思えば………殴れるワケないよ。
私は祐樹を殴りたいんじゃない。
…………大好きな祐樹だから、鶴橋くんに殴られてほしくなかったし、これでも私なりに守ってきたつもりなんだよ。
「私ね、どんな事があっても人に手をあげるような事はしたくない」
「でも、黙って朱里が殴られるなんて………」
「でも、祐樹は殴られる私を助けてくれるんでしょ??」
便乗するように聞くと、祐樹は煮え切らない顔でゆっくり頷いてくれた。