だからそれは、愛じゃない。




 これ以上祐樹の話をしてほしくなくて、なんとか話題を変えたくて、


「それより今日、鶴橋くんとキスする夢見ちゃったよー!」


なんて言ってみる。


 『まったく可愛いな』なんて返事が返ってくるとばかり思ってたのに、


「………………朱里、部屋に鍵かけてた?」



 さっきまで笑顔だった鶴橋くんの表情が消え、低い声で質問してきた。



「………かけてないまま部屋で寝てた」


 ……………やばい。
 また私、鶴橋くんを怒らせてしまったかもしれない。



「その間に和谷くんが部屋に入ってきた可能性は?」



 そう言われ、また体がビクッと反応した。



 ……バレてる。鶴橋くんは勘が良い。でも、だからと言って本当の事を話すワケにはいかない。



「やだなあ! 入ってこないよ! 私が返事をしない限り祐樹は私の部屋に入らないから!」



 ……と、咄嗟に笑って誤魔化した。だけど、鶴橋くんの表情は変わらず、友達と仲良く話す祐樹を睨み付けるように見ていた。


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