だからそれは、愛じゃない。



 よかった………
 ちゃんと話し合えば分かってくれるんだ。


「朱里、俺の話聞いてくれる??」


 ……『大事な話』は謝る事とは別にあったらしい。


 抱きついていた体を一旦離れては、私の顔を不安そうに見てきた。……本当に大事な話なんだ。



「うん……聞くよ……」



 頷くと、鶴橋くんはまたゆっくり抱き締めたまま話始めた。


「俺の親、離婚しててさ。俺が小学生の時に母親が出て行ったんだ。今は父さんと二人で暮らしてるんだけどね。……怖いんだ、離れられるのが。朱里は離れていかない存在でいてほしいんだ」


 ”怖い”

 そう、体全体で言われてるみたいで、鶴橋くんの抱き締めてくれてた腕に、力が入る。



 ………私や祐樹の円満の家庭とは違って、鶴橋くんは寂しい思いをしてたんだ。



 知らなかった…そういうのが分からない程、鶴橋くんはいつも笑ってたから。


 全然鶴橋くんの事を何も知らなかった。


 『俺が独占欲強い理由、今までの彼女にも話したんだけど、″そんなの関係ない″″耐えられない″って、言われちゃってさ』と、苦しそうに笑う鶴橋くんを見て、私もギュッと抱き締めた。



 そしてまた小さく頷いた。………鶴橋くんの痛みを分かりたいと思った。


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