だからそれは、愛じゃない。




 初めてのキスはとてもとても冷たく、身も凍るような寒々強いキスだった。



 まるで鶴橋くんの感情を表しているような、そんな冷たさだった。



 祐樹の言うとおり、夢のキスと現実のキスは随分違うモノだった。だけどでも、これで踏ん切りがついた。



 ……キスした瞬間から、私の1番は鶴橋くんに切り替えなければいけない。そう思った。



「ねえ、朱里。やっぱり和谷くんと一緒に学校来てほしくないな……」



 鶴橋くんはよっぽどイヤらしく、私に潤んだ目でお願いしてきた。



「うん、明日から来ないようにするね」



 『だから安心してね』と不安にならないように笑ってみる。すると柔らかい表情で『ありがとう』と言ってくれた。



 ………鶴橋くんに寂しい思いさせないように、鶴橋くんを1番に考えるんだ。


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