【中編】彼女様は甘い味。
その「活性化」を人々は“動揺”と呼ぶのでしょう。
「…ちゃんと噛んで食べてんの~?」
奏音の顔を覗くようにしてそう言う恵。
おそらく奏音はあまり良く噛んではいないのではないか…?と思われるぐらいのハイスピード。
「噛んでます!…かんっ、…ゴホッ…!…っ!!」
「ちょっと大丈夫!?!?」
「…ホラ、言わんこっちゃない…」
急に息苦しくなったらしくむせ返る奏音の背中を結衣が優しく摩る。そしてそんな奏音を見て溜め息をつく恵。
見てないで助けてあげればいいのに…
「…っ、…死んでしまうかと、思いました…」
肩で懸命に息をすると目を大きく見開く。
「水、…恵!水持ってきてあげて?」
心配そうに奏音を見てから後ろを振り返り恵にそう言うがその恵は『え~』なんて言って面倒くさそうにしている。
…恵ちゃんの、薄情者め…
と珍しく人を恨むような目で見る奏音。
「…はい、水。」
すると突然、結衣の目の前を通過した腕。そしてその腕の先の手には食堂にある紙コップに水が入っている。
「え…?」
声には出さないが結衣と同じくらいに驚く奏音。…なぜならその声が。
聞き覚えのあるものだったからである。