【中編】彼女様は甘い味。
「…ちょっと、奏音!?」
「ほっとけほっとけ…、好きなようにさせとけば?」
心配で仕方がないのか結衣の表情は満更でもないようだった。
…それに引き換え、恵とはいたって放任主義を貫いている、
ていうか面倒臭いことが嫌いなんだろう。それに奏音に何を言ったって意味がないと思っているのか…?
そんな二人の声が薄らと聞こえてきたとは思いましたが、あまり気に止めることも無く。
そのまま隼人くんの背中を追うように歩き出しました。
…心残りは、お弁当を食べ終えていないこと。ですが…ね。
「隼人、…くん?」
食堂を出てからしばらくが経った頃、いい加減会話の無い変な雰囲気が嫌になったのか、そう彼に問い掛ける。
…大体、どこに。行くんですか?
「何?…ちょっと疑ってる?…変なことされるんじゃないか、…とか。」
クスッと笑ってそう言うと、ちょうど通りかかった空き教室のドアを開けて中に入っていく隼人くん。
それにあたしもついて行く。
「…別に、そんなっ」
とそう言ったら嘘になる。
何だかさっき会った時の隼人くんと、今の隼人くんは別人のような感じがして…
そう、あの日の隼人くんのような気がしてならないんです。
「ねぇ、…聞いてくれる?」
「…え?」