【中編】彼女様は甘い味。




いつになく真剣で、

何だかその冷たい瞳に一瞬だけ身震いがしました。



…何を、言うんでしょうか?




大体はこういう時、
どういうことを言うだろうとか想像することが出来るけど。


…奏音には難しい。




「…あのさ、」



何故かどんどん速さを増す心臓が、何よりも今の奏音の心を表していた。




「付き合わない?…俺達」




………は?



「何その顔」


口をポッカリと開けて『何、言ってるの?』って言わなくても分かりそうな顔。




「…え、ど、どうして急に…?」


そうだ、そもそも急にどうしたって言うんですか!!



…いや、そこまで急では、ない。


と思われるが、
奏音に分かるはずもない。




「もう好きって前に言ったじゃん?

…だからそこまで急では無いと思うんだけど」


ごもっともだ。



けどれども、それとこれとでは話が違う。




…それに、

ついさっき蓮が好きだと自覚してからまだ一時間、いや三十分も経たないうちに…



こんなことが起きてしまった。




だけど…


「あのね、あたし…「知ってる」」


その言葉と同時に聞こえる壁に思い切り何かが当たる音。




…っ!!


壁に後退りしていたあたしの顔の横に…、手。



そう、奏音はまんまと捕まってしまったのです。


陰湿な“悪魔”に。



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