【中編】彼女様は甘い味。




…ちょ、ちょ!!



「…好きなんだろ?
あの姫山蓮二って男…」


…何か、言い方が嫌な感じです。



名前を出されて少し恥ずかしくなり目を伏せる。

…その頬は、ほんのりと赤く染まっていて、



「どこがいいわけ…?

…あんな男と付き合えるとか無いと思うよ?はっきり言って“別世界”だから」



『別世界』



言われてしまうと、痛みます。


…それは分かっています。



別の、遠い別の世界。



「学校とか周りの女ぜーんぶ、敵だと思わなきゃやってけないよ…?


…弱気なのに、大丈夫なの?」



っっ、


どうして、こんなこと…



どうして…?




「で…、でも…」


怖くて目を見ることは出来ないけど。




あたしは…、


あたしは蓮先輩のこと、



「…好きだから、好きだからいいんです!

分かってます…それくらい」




─バンッ!!



「きゃ…っ?!」


近くにあった椅子を蹴っ飛ばすと、ジロリと瞳を奏音に向けた。




…隼人、くん…



「…何でですか?
隼人くん、一体どうしちゃったんですか!?!?」




泣きながら叫ぶ。


昔の隼人くんのが、好きでした…



こんなんじゃ、なかったのに。



「…言っただろ、ずっと好きだったって

“良い人はやめる”そう言ったの…、覚えてる?」


「…それって、」



二度目で分かったその言葉の、本当の意味。





「…もう、



手段は選ばない、ってコト」



ニヤッと笑ってからあたしの両腕を掴んで頭上に持っていくと、

その左手で押さえ付けてしまって…




片方だけなのにビクともしない…、



どうしたら…、




「知ってる男は俺だけだったのに…

…急に知り合ったと思えばあのメンバーだろ?」

その言い方は何だか刺がある。



…目が、冷たいです…




「選択肢が二つ…、答えて」



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