【中編】彼女様は甘い味。
頭上からそんな冷たい言葉が降ってきて、考える。
…選択、肢?
「一つ目、このまま俺と付き合う。」
「…っな!何を言って…」
隼人からしたらうるさかったのだろう。その暇をもて余していた右手で奏音の口を塞ぐ。
息苦しく、嫌な感じ。
「…黙って。
二つ目、…断ってこの場所で、痛い目をみる…」
その塞いでいた手をどけて意味深な笑みを浮かべると『どっち?』と奏音に答えを求める…
こんな選択肢…、酷過ぎます。
「…どうして、どうしてこんなこと…」
必要以上に隼人を責めることが出来ないのは、その相手が隼人だから。だろう、
けど今は“情”なんて考えてる場合じゃない。
いくら奏音でもそれ位は分かる。
…目を瞑ってそんなことばかり頭の中で考えてみてはものの、二つしかない選択肢の中から一つを選ぶなんて、…出来ません。
「…選べよ、は・や・く」
その途切れ途切れに聞こえた『はやく』の声と共にシュルッと音を立ててあたしの首元から解かれるネクタイ。
ニヤリと笑った彼をみた瞬間ゾクッとした感覚に堕ちる。
…この時、初めて自分の警戒心の無さに後悔と、呆れた気持ちになった気がします。
そしてこの選択肢の二つから選ばなきゃいけないということで、妙な汗を掌にかいていて、
自分自身。どうにかなってしまいそうでした。