【中編】彼女様は甘い味。




「…ソイツ、返してくんない?」

いつもより更に何倍にも増して怖い表情をする先輩。


そんな先輩に隼人くんが少しでも“恐怖”を感じているのは何となく表情を見て分かる気がしました…




「何で?…別にアンタに関係、無いじゃないの?」


「…関係無いと思ってたら、来ないだろここまで…」

馬鹿じゃないのと言ったような口調で言うと、つかつかとこっちに近付いてくる。



…助けてくれる、なんて思っていると。

先輩が言い出したのはとんでもないことでした。




「お前、コイツのどこがいいの?」


「…は?」

案の定、驚いた感じの隼人くん。でもそれ以上に驚いていたのは他の誰でもなければ…あたしで。



「人形ばっか持ってるし、人形とばっか話してるし…、人間に対しては敬語なのに人形にはタメ語。

…変態だし、頭悪そうだし、呑気だし」



先輩…?何が言いたいんですか…?

呆気に取られて何を言っているのかが分からなければ、何をしにここに来て下さったのかも分かりません、


さっきまでの緊迫した雰囲気は一気に消え去り。




「…何が言いたいわけ?」

あたし同様、隼人くんも同じような事を思っていたらしく不機嫌そうに言った。



「そんな女を、お前は面倒見ていけんの?

…卵くん?」



「…お前、いい加減にしろよっ」


カッとなって蓮二に殴りかかろうとした時、…その奏音を抱きしめていた手が一気に解ける。


蓮二はその隼人からのを交わすと奏音を自分の方へと引き寄せた。




「テメェが卵、俺にぶっ掛けたんだよなぁ…?」


そして態度が急変したと思ったのは…、あたしだけでしょうか?



< 107 / 189 >

この作品をシェア

pagetop