【中編】彼女様は甘い味。
「…ソイツ、返してくんない?」
いつもより更に何倍にも増して怖い表情をする先輩。
そんな先輩に隼人くんが少しでも“恐怖”を感じているのは何となく表情を見て分かる気がしました…
「何で?…別にアンタに関係、無いじゃないの?」
「…関係無いと思ってたら、来ないだろここまで…」
馬鹿じゃないのと言ったような口調で言うと、つかつかとこっちに近付いてくる。
…助けてくれる、なんて思っていると。
先輩が言い出したのはとんでもないことでした。
「お前、コイツのどこがいいの?」
「…は?」
案の定、驚いた感じの隼人くん。でもそれ以上に驚いていたのは他の誰でもなければ…あたしで。
「人形ばっか持ってるし、人形とばっか話してるし…、人間に対しては敬語なのに人形にはタメ語。
…変態だし、頭悪そうだし、呑気だし」
先輩…?何が言いたいんですか…?
呆気に取られて何を言っているのかが分からなければ、何をしにここに来て下さったのかも分かりません、
さっきまでの緊迫した雰囲気は一気に消え去り。
「…何が言いたいわけ?」
あたし同様、隼人くんも同じような事を思っていたらしく不機嫌そうに言った。
「そんな女を、お前は面倒見ていけんの?
…卵くん?」
「…お前、いい加減にしろよっ」
カッとなって蓮二に殴りかかろうとした時、…その奏音を抱きしめていた手が一気に解ける。
蓮二はその隼人からのを交わすと奏音を自分の方へと引き寄せた。
「テメェが卵、俺にぶっ掛けたんだよなぁ…?」
そして態度が急変したと思ったのは…、あたしだけでしょうか?