【中編】彼女様は甘い味。
「…え、」
さっきまでは冷静だったのに…
急に先輩の態度は一変して、何だか元に戻ったと言うのが正しいような感じはしますけど。
「あん時は見逃してやったけど…
…お前さっき俺のこと『アンタ』とか言ってたよなぁ?」
あたしから手を離すと今度は隼人くんを壁へどんどん追い込んでいく、…それはそれは怖い表情で。
「あ…、え…っ」
あれだけ威勢の良かった隼人も少しずつ元気を無くして、目を泳がせる。
…それはきっと怖いから。
大体、この学校で姫山蓮二と言ったら色んな意味で恐ろしいのに。
蓮二が手を出してこないのを良い事に、数々の失態を犯したのは…よろしくなかった。ということになるわけで。
「どんだけ偉いんだぁ…?お前は、なぁっ!?
…しかもしかも、ウサギ女に何かしちゃってるしよぉ、」
隼人くんの襟を掴んだままグイグイと揺らして、蓮先輩は怒っています。
…いや、世間ではこれを“キレる”と。
「お前、よく覚えとけよ…」
先輩はそう言うと、グッとその掴んでいた襟を自分に引き寄せて耳元で再び何かを言っていた。
けど…、
あたしにはその会話は聞こえない。
「…わ、分かりました…」
そして先輩が顔を離して隼人くんの目をジッと見つめると、悔しそうな表情で隼人くんはそう言って、
ヘタリと床に崩れるように座り込んでしまった。
「…おら、行くぞウサギ女。」