【中編】彼女様は甘い味。
小悪魔faceに気をつけて!
「…お前も、のこのこと連れてかれてんじゃねーよ」
「すみません…」
眉毛を下げてシュンとした表情で彼女は言う。
教室までの帰り道、ひたすら『お前は男を分かってない』と何度も連呼されましたが…
分かって、ないとは…?
「…あの…っ」
「あ゙?」
ひぃっっ!!
振り返った瞬間にギロリと睨まれる。
…ふ、不機嫌、ですか。
「な、何をそんなに…、不機嫌なんでしょうか…」
あらゆる場所に視線を飛ばしながらチラリチラリとたまに蓮二の目を見てそう言う。
いわゆる“挙動不審”。
…である。
「何で…?何でじゃねぇだろうが、ボケ」
『ボケ』と言ったのとほぼ同時に、奏音のおでこに痛いのがやってくる。
「うぎゃ…っ!」
相当痛かったのか、それとも反射的に出たのか分からない意味深な声を発するとそのまましゃがみこむ。
…こ、これは!!
かなり手慣れたでこぴんです、ね。かなり。
「そんな痛かったか?」
はっきり言って心配する要素はゼロ。
ちょっと小馬鹿にしているような感じで蓮二は言うとそのまま奏音を置いて歩き出してしまった。
…あ、
まだ聞きたいことがあったのに。
「いたた…」
けどそれどころではなく。
ひたすらおでこを抑えたまま蓮先輩の後ろ姿を眺めるあたしでした。