【中編】彼女様は甘い味。
【Last story.】
恋に試練は付き物です!
「先輩!早くして下さいよぉ!!」
ベッドの端に座りながらちょっと朝から不機嫌顔の奏音さん。
何故か?と言いますと…
それはまぁ単純な話なのですが、この奏音の言葉で分かりますように…蓮二くんがなかなか支度を終わらせない。ということにそもそもの原因があるようです。
というよりも、支度が遅いわけではなく。
“寝坊”という違反的行為をしてしまったことに問題があるようです。
「あ~っ!悪ぃ悪ぃ」
先輩はバツの悪そうな顔をして自分の部屋から先程取ってきた服をバーンとあたしの部屋に広げた。
…見渡す限り、
先輩に似合いそうな服ばかりで。
あたしが思っていたよりも蓮先輩はオシャレさんだったみたいです。
「コレと…コレなんてどうですか?」
「じゃぁそうすっか!…洗面、所借りるから」
きっと却下されるか。
それか…文句を言われるかと思っていたのに。
ふと何となくあたしが言った意見を聞いて、その選んだ服を聞いてくれるなんて…
嬉しい様な、ちょっと不思議なような。
でも…やっぱり嬉しいです!
自然と綻ぶあたしの顔。
今まで生きてきて。恋なんてしたこと一度も無かったのに…
初めて知った恋がこの恋で良かったです。
叶う叶わないじゃなくて、
こんな些細なことで…こんなに幸せな気持ちになってしまうんですもの。
「…奏音!机のあたりに置いてあるワックス持ってきて」
洗面所の方から先輩の声が聞こえて、机の上にある先輩がさっき持ってきたワックスが目に入る。
「あ、はい!分かりましたっ」
そして先輩はもう普通にあたしを『奏音』と呼ぶようになりました。