【中編】彼女様は甘い味。
何が嬉しいって…?
そんなの、決まってるじゃないか。
「面白くないです!!…も、もう知りませんからね!?」
プンッと蓮二から顔ごと背けるとそのままつかつかと一人で歩きだす奏音。
コンクリートで出来ている道路に当たって聞こえるコンコンという音が妙に大きく聞こえるのはきっと奏音が思い切り踏みしめているからだろう。
それでも蓮二はまだ笑ったまま。
怒って一人で歩きだしてしまっても…心配は彼には無いようで。
「…っ」
歩きだして多分まだ30秒も経ってません。
先輩があまりにもあたしのこと馬鹿にしたように笑うから…、ちょっとカッとなってしまったのですけれども…
でも、でもでも!!
あたし行先を知りません…、
チラリと後ろを振り返ってみる。
「……え?…先輩っ!?」
そこにはさっきまで居たはずの先輩の姿が無く。
一人でこんな『先輩っ!?』だなんて叫んでしまったあたしを道行く人が変な目で見ています…はぁ。
それにしても!
蓮先輩は一体どこに行かれたのですかっ!?
もしかして…
あたしが勝手に“嫉妬”というものをして怒ってしまったから、もう寮に帰ってしまったんじゃ?
「どうしましょう…」
地面をボーっと見つめながらポツリ。
もしかしたら先輩、怒ってしまったのかもしれません。
そんなとてつもない絶望感に奏音が襲われていると…
…っっ?!