【中編】彼女様は甘い味。
「いつまでも笑ってんじゃねぇよ」
とか言う蓮先輩の顔もとても面白そうに笑ってるように見えるのですが…
そう思ったわたしは、
「先輩だって」
と言ってまた笑ってしまう。
気付くと道行く人があたし達をチラリチラリと見ている気が…します。
そりゃぁそうだ。
こんな道のど真ん中で、傍から見れば抱き合ってイチャついているカップルにしかどう考えても見えないだろう。
そんな自分達の姿を思い出して急に赤面する奏音。
そしてその奏音の様子を見て約5秒後…彼も自分たちの今の状況に気が付いたらしくバッと奏音の腰に回していた腕を離すと、
後ろに少し後ずさる。
二人して行き場のない視線を動かしていく。
「行く…か?」
先輩は少ししてからそう言ってあたしより先に歩きだす。
「はいっ」
先に歩きだした先輩の後姿を少しの間だけ眺めてから、その先輩の背中を追うようにあたしも足を動かした。
すると…
急にあたしの目の前に差し出された…手?
「…蓮、先輩?」
あんぐりと口を開いたままポカンとした表情で蓮二を見上げる。
その手を差し出したのは、他でもない彼だったわけで…
「手、出せよ」
ぶっきら棒に蓮二は言う。…その顔は少しばかり赤いような気もするが。
そしてそのまま、
彼の手に彼女は手を重ねた。