【中編】彼女様は甘い味。
「わーっ!!とーっても綺麗ですね」
目を宝石のようにキラキラと輝かせて奏音は口をポカーっとあけたまま、
ただひたすら『凄い』や『綺麗』を連呼し続けた。
「綺麗だろ?まぁお前が驚くと思って黙ってたけど…
想像したより凄ぇな、お前の反応」
そう言って先輩はクスクスと笑ながら近くのベンチに腰を降ろした。
それでもだあたしは、
一面に広がるたくさんの花を大きく見開いた目で眺め、
幸せな…心地好い匂いに包まれていた。
「うれしいです!
あたし、お花が大好きだから…」
奏音はそう言うと目を閉じクンクンと鼻を働かせ、
花達の匂いを目一杯に吸い込んだ。
そんな奏音を見て小さく蓮二は微笑むと、
「メルヘン女にはお似合いだよな、花は」
なんて皮肉を言う。
けど奏音は全くそんなことも気にせず、
「はい!」
と、満面の笑み。
だから蓮二も面白くて更に笑ってしまう。
「ちょ…っ、何で先輩…笑ってるんですかぁ!?」
蓮二に背中を向けていた奏音はそのままクルリと正面を向くと、
ニッコリ笑ってみせた。
「…あ!
でも蓮先輩…退屈じゃないんですか?“こういう場所”は…」
そうバツの悪そうな顔をしながら奏音は言う。