【中編】彼女様は甘い味。
少しばかりあたしの顔を見て…すぐ顔を逸らすと、
「まぁな」
と少しばかり照れくさそうな顔をした先輩。
そしてそんな蓮先輩にあたしも何故か分かりませんが嬉しさでいっぱいになってしまって…
「何だか嬉しいですね」
未だにニヤけたままの奏音を見て『何が?』というような顔をする。
まぁ奏音の嬉しいという気持ちもいまいちよく分からないし…
とりあえずこんな感じでいいんじゃないか、と。
って何が?
「秘密です」
ふふふと声を出して小さく彼女は笑う。
それを見て不服なことを言いながらもそんな彼女を優しく見つめる彼。
「なぁ…奏音」
わたあめのように柔らかく甘く。
まさにそんな彼女をさっきの優しい視線ではなく、真剣な眼差しで見つめると…
蓮二はジッと奏音の瞳を捉えて離さない。
「へ…?」
いつになく真剣な蓮先輩の澄んだ瞳に見据えられて、
舞い上がっていたあたしの気持ちが一気に違う場所へと拐われてしまった。
「あのさぁ…」
そう一言だけ言うと小さく先輩は深呼吸をした。
いつも落ち着きは無いような方ですけど…
って失礼極まりないですが…!!
それ以上にこの瞬間の先輩は落ち着きが無くて、
なにより。言葉の先をあやふやに誤魔化しているような気もしました。
「俺…本当は言うつもり無かったんだけどよ、
お前がマジ鈍感だから…」
「…鈍、感?」
この時きっと次は『あたしの何が鈍感なのですか?』なんて言ってくるだろう。
と勝手に…といっても確実な予想を蓮二はすると、
その前に。
「お前のことさ…」
と先に話を切り出した。