【中編】彼女様は甘い味。
「ま、まぁ…落ち着きましょう!」
奏音をそう言うと『まぁまぁ』と胸の前に両方の手の平を広げた。
…けどそんな彼女の態度が更に京香の苛々度を高めていくらしくて、綺麗な彼女の口元からチッという舌打ちが聞こえたのは気のせいだろうか…?
いや、気のせいでは無いだろう。
「…苛々しないの?蓮二くんは“この子”と一緒に居て!」
“この子”という部分が皮肉に聞こえたような気もしましたが、
それよりも久しぶりにく聞く『苛々』という言葉にも無性にあたしは反応。…彼女ウ反応をしてしまうのであります。
………、
何だかんだで気になる質問でして、
少し黙ってからジーッと蓮先輩の目を見つめると、やれやれというような感じで重たい口を先輩は開き、
「しねぇよ…つーか、俺が一緒に居てぇから一緒に居るんだよ。コイツと」
と言って先輩は優しくあたしの頭をコツンと握り拳で叩くと、あたしの顔を覗き込むようにして見た。
それにあたし自身も驚き、
「…先輩?」
それと同時に先輩の言ってくれた言葉があまりにも嬉しくて思わず赤面して顔が熱くなっていくのが分かりました…
「照れた?」
と嬉しそうに笑う先輩。
「そ…それは…」
「あのさ!!あたしのこと放置しないでよ!」
とてつもなく不満げな京香さんの顔がズイッとあたしに詰め寄ってきてあたしと先輩の距離をバーンと引き剥がしてしましました。
「あ…」
ポカン口を開けたまま少し残念そうな顔をする彼女。
「つかお前一人で来たわけ?」
眉を下げて少し面倒くさそうな感じもしましたが、先輩は京香さんにそう聞くと再びあたしの側まで来て、
そっと優しく手を取り握りしめてくれまして…
またもやあたしの頬は染まってしまうのです。