【中編】彼女様は甘い味。




「どうしたの?」

耳元で聞こえるのは…隼人くんの声で。
思わずその声と掛かる息にゾクゾクッとした身震いをして…


長く綺麗な髪を掻きわけてその隼人の唇は奏音の小さく形の良い耳を…なんと。ペロリと一舐めしたのである。


一気にみるみると赤くなっていく奏音の顔。



そして…


「止めて下さい!離してーっ!!触らないでっっ!!嫌よ!あたしは嫌っ!!!」


…奏音ちゃん?

と思わず言いたくなるような叫び声を奏音は上げると、その隼人の腕を掴んでブンブンと思い切り振りまわし。



最後に一発、隼人の頬に痛いモノがオミマイされた。


とにかくその光景は、

奏音を知っている人物なら誰しもが驚き。そして我が目を疑うような光景だった、らしい。



「…ちょっと!!大丈夫っ?」

地面にへばりつく様にしてグッタリと倒れ込む隼人に思わず駆け寄る京香。


でもその隼人はボーっと地面を見つめているだけで、その京香の呼びかけに一切答えようとしない。



推測だが。

いくらしつこく諦めの悪い隼人でも…奏音のあの嫌がり様と“ビンタ”は何よりも心の方にずっしりきたのではないかと思われた。



けれどだからと言って奏音が悪いと言えばそうでは無い。

これこそまさに“不可抗力”なのでは?



「…大丈夫かっ?!」

そしてこの人。


蓮二が心配をしたのは他の誰でもない奏音だったわけで。


「は、はいっ」

その蓮二の側までいくとしがみつくように。…まるで怯えている小動物が隠れているような、そんな感じ。


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