【中編】彼女様は甘い味。

悪魔と天使の大脱出





「見た…とは何を?」

と息を呑んであたしは言う。


「道路の真ん中でイチャイチャしてる、桜木達」

一定の声の大きさを保ちつつ、表情一つ変えないで隼人くんは言うと、
再びベンチにドサッと腰を下ろして座りました。



そ…それより、“イチャイチャ”って。


「ちょ、ちょっとちんちくりん!」

「…は?!はいっっ!!」


奏音自身がその“ちんちくりん”を受け入れたわけじゃないが…

もうここまでくれば、この奏音の性格からして拒否や反論は出来ないらしい。



眉尻をグーンと上に上げて、

誰が見てもご立腹のように見えるのではないでしょうか?



「『イチャイチャ』って何よ…」

「え…それは、」


みるみる顔を赤らめていく奏音。


頭の中で先程…といってもその“イチャイチャ”について思い出した途端に、
カーッと自分の身体中が熱くなってしまったのだ。



「図星!?

…ねぇ!蓮二くんっ」


京香さんの今度の質問相手はあたしから蓮先輩に変わり、



「知らね」

こういうことを聞かれるのに慣れていない蓮二は曖昧ながらもそう言う。


そうすれば京香の嫉妬心も最大まで上がっていき、

奏音同様。

少しずつ赤くなっていく顔。



そして何より蓮二が困ったって思ったのは、


みるみる潤みだす京香の目だった。


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