【中編】彼女様は甘い味。
「…すいま…っ「ウサギ女!」」
隼人くんの言葉を遮るように、
「…そ、それって…」
「普通に考えてお前しかいねーだろ、
このロリータ女!」
…ロリータ、女。
「そ、そんな…」
すると突然、
「あぁ、泣いちゃったわ…」
「…桜木、大丈夫か?」
隼人は心配そうに近付くと、
ゆっくりとその手を伸ばして奏音の頭に触れようとした。
「…行くぞウサギ」
だけど、その隼人の手を振り払うようにして“ウサギ女”の腕を掴むと、
そのままつかつかと歩いていく蓮二。
「連れてかれちゃった…
…午後の授業は自習だし、大丈夫ね」
「やっぱ…、姫山先輩のお気に入りは奏音だな」
カレーライスの最後の一口を口に入れると、
さっきと同じようにトレイに紙くずなどのゴミを乗せる恵。
「…でもさぁ、何だかんだお似合いなのかもよ?
二人とも女みたいな顔してるし」
いや…、奏音は女だ。
「奏音に失礼ね、」
結衣は冷静にそう言って、
少し笑った。
でも、そんな会話を聞いて嫌な表情をしていた“男”が一人。
「…おい隼人、大丈夫だったわけ?」
「あ、あぁ…」
「うわーっ、良かった…
マジ姫山先輩怖いから本当、命拾い」
彼の名前は、大杉隼人。
奏音達と同じく寮での暮らしをしている。
黒髪に切れ長の目、少し黒い肌が特徴的な男。
そして奏音とは中等部からの友達。