【中編】彼女様は甘い味。
必死に奏音は胸の前に手を置くと、手の平を京香に向けて口をパクパクとさせている。
…奏音は焦っている。とにかく焦っている。
らしい。
「京香、マジ落ち着けっ」
ちょっと真剣そうに聞こえる蓮先輩の声。
あたしの目の前に立ちはだかってグッと京香さんを睨みつけているみたいで…
京香さんには悪いですが、命拾い。
いやいや!!
命の話となれば…良いも悪いもないのではっ!?
あぁ…。あたしとしたことが、
と何故か“不覚”といった表情を奏音はするが、いまいちよく分からない。
「どいてよっ!!
今からそのちんちくりんに必殺技をオ・ミ・マ・イしてやんだから!!!」
オ・ミ・マ・イ…??
いやマズいですよ、それは本当に犯罪ですよ?殺人ですよ??
「あの…もう少し考えなおして頂け「ないっ!!!」」
フンッと鼻息を荒く出すと、あたしの言いたかった言葉の続きを勝手に変えてしまった京香さん。
とうとう心の中までも読まれてしまいました…、
ガックリと下がる奏音の肩。
やっぱりいまいち奏音の頭の中は読めない。というよりも理解しがたい。
「大変だねぇ~」
ふと聞こえた言葉に反応しベンチを見てみれば…“自分は関係ないです。”とまさにそう言っているような表情で隼人くんがこっちを見ていました。
しかも!足なんて組んでしまってて…
やはり人格そのものをあたしが狂わせてしまったのではないかという、罪悪感にも囚われつつ、すぐに視線は京香さんに注がれる。
大体考えてみると、
あの温厚で穏やかな葛木先輩の妹さんとは思えない程の兇暴っぷり…ですよね?
見た目や仕草は似ていたりしましたけど。
中身はなんだか…違う気もします。
と何を冷静に兄妹分析をしているんだこの子は。