【中編】彼女様は甘い味。
ゆっくりと優しくあたしの足は地面に着いて。
上を見上げれば少しだけ笑った蓮先輩の顔がありました。
「行くかっ」
何だか楽しそうに笑う先輩。
それにしても…
行くか、って言われましても。
「不可能です…不可能ですよこんなの!」
何故か奏音はとてつもなく驚いたようなそんな顔をする。
だって…だって!!
「ここ学校じゃないですか?!」
「それがどうした?」
あっけらかんと。蓮先輩は言うとそのままあたしの腕を掴んでグイグイいつもの感じで歩き出してしまったのです。
どうしたらいいのかも…いまいち分からず。
けれども急に奏音ちゃんの脳裏に浮かんだことが一つ。
「ダメです!!いけませんよっ!!!」
何が駄目なのか。
奏音が言いそうなことなんて誰でも想像が出来てしまうんじゃないか、と。
そしてそんな必死に何かを訴える正統派女を断固として無視。というか全くと言っていい程に相手にしない蓮二くん。
「不法侵入!…有罪ですよ!?罪ですよ!?!?」
何が罪だ。
※休日など、まぁ兎に角勝手に学校の許可無く校舎の中には入ってはいけません。
「いいから黙れ、奏音」
やっぱり本気には相手にしないらしい。
校門から中に入るとそのまま校舎の裏方向に行くみたいでして、あたしの腕を掴んだままひたすら歩き続ける先輩。
「休みは部活があるから楽勝で中に入れるな~」
…だなんて。
呑気なことを言いながら。