【中編】彼女様は甘い味。




本当、自分勝手なお方ですよね…この人は。


「だからと言っても…あたしたち制服も着てないんですよ!?」

ごもっとも。


大体こんな休日に忍び込む方もどうかしてるけど、ましてや制服も着ずにコソコソしてればそれは相当怪しい。ていうか…不審者??



「大丈夫、大丈夫っ」

蓮先輩は何を根拠に言っているのか全く分かりませんけど…

休みの日の学校の校舎内は何だかシーンと違う意味で静まり返っているような気がしました。


…大体、こんな所に何をしに来たのかも謎ですよ、本当。



「登るぞ!」

「……っ!?」

今度は登るなんて言いだすから…本当に謎です。


先輩の言う『登る』という言葉を元に考えてみますと、あたしの目の前にあるのは屋上に繋がる階段でした。

ん?階段…



「えっ!?
…ますます駄目じゃないですか!違反ですよ?不法侵入!!」

未だに正統派な自分を忘れないらしい…奏音。


「はいはい、違反ですね~」

いい加減、相手にもされなくなったみたい。


先輩のポケットにはいつ鍵が入ってるんですね…

ポケットから真ん丸のリングにたくさんの鍵がついてて、その中から先輩は慣れた手つきで一つを探し出すと…そのまま鍵穴に差し込む。


…カチャリ、

その音が妙に耳に残るような気がしました。



開いたドアの先へ足を踏み入れてみれば、そこは前にあたしが来たこのある場所。

初めて先輩と普通に話が出来た思い出の場所。


確かここであたし…、


「ホラ、来いよ」


< 176 / 189 >

この作品をシェア

pagetop