【中編】彼女様は甘い味。
本当、自分勝手なお方ですよね…この人は。
「だからと言っても…あたしたち制服も着てないんですよ!?」
ごもっとも。
大体こんな休日に忍び込む方もどうかしてるけど、ましてや制服も着ずにコソコソしてればそれは相当怪しい。ていうか…不審者??
「大丈夫、大丈夫っ」
蓮先輩は何を根拠に言っているのか全く分かりませんけど…
休みの日の学校の校舎内は何だかシーンと違う意味で静まり返っているような気がしました。
…大体、こんな所に何をしに来たのかも謎ですよ、本当。
「登るぞ!」
「……っ!?」
今度は登るなんて言いだすから…本当に謎です。
先輩の言う『登る』という言葉を元に考えてみますと、あたしの目の前にあるのは屋上に繋がる階段でした。
ん?階段…
「えっ!?
…ますます駄目じゃないですか!違反ですよ?不法侵入!!」
未だに正統派な自分を忘れないらしい…奏音。
「はいはい、違反ですね~」
いい加減、相手にもされなくなったみたい。
先輩のポケットにはいつ鍵が入ってるんですね…
ポケットから真ん丸のリングにたくさんの鍵がついてて、その中から先輩は慣れた手つきで一つを探し出すと…そのまま鍵穴に差し込む。
…カチャリ、
その音が妙に耳に残るような気がしました。
開いたドアの先へ足を踏み入れてみれば、そこは前にあたしが来たこのある場所。
初めて先輩と普通に話が出来た思い出の場所。
確かここであたし…、
「ホラ、来いよ」