【中編】彼女様は甘い味。
屋上に足を踏み入れた瞬間に先輩はタッタと駆け出して、そのままピョンピョンと空気みたいに“あの場所”へ登って行ってしまった。
…若い、ですね。先輩は。
※君のが若い。
あたしに手を差し出してくれる先輩の髪が少し風に靡かれて揺れる。
何だか綺麗です…先輩。
ポーッと少し熱くなる自分の胸の中の何か。
それが何かなんて分かりませんけど…これはきっと先輩がすぐあたしの傍に居るから、居るからです。
「…っと、おし!」
ヒョイッと持ち上げられたあたしはあっという間に先輩の隣に着陸?着地?をしていました。
「空が近いですね…」
ぐーんと伸びをして空を見上げると無意識のうちにも欠伸が出てしまって、そんなあたしを見て先輩が馬鹿にしたような笑みを浮かべている。
ふ、不覚でした…、
「お前、化粧してんんだ?」
…??
急に何を?と言いたいぐらいの感じでしたが、
「あ、まぁ…それなりには」
渋谷にいる可愛い女の子達みたいなお化粧はしてませんが、薄く少しぐらいならしてます。
でも何かいつも恵ちゃんには『しなくてもしても変わらない』とか言われてしまいますけど…あたしなりだからいいんですよ!!
そう!いいんですっ!!
「しなくてもいいのにな」
「えっ!?」
まさか…まさかここにも恵ちゃん派がいたとは。
「…似合わない、ですか?」
シュンとして奏音は言うと視線を下に向けて…何だか本当に悲しそうな感じ?
傍から見たって、ナチュラルメイクだし。
そこまで変わらない…というのはきっと、元がお人形顔だから。かもしれないね。