【中編】彼女様は甘い味。




「似合わないとは…言ってねぇだろ」

先輩がそう言った声が聞こえてきて、自然と顔も上にあがってしまう。


「本当ですか?」

「……ん、」


何だか先輩は顔を少しだけ赤らめてプイッと明後日の方向を見てしまいまして、
照れているのかな…?そう思うとやっぱり少しだけ嬉しくて。


こんな些細な瞬間に、…恋ってこういうものなんだな。って改めて実感するんですよね。



「あ!!バットくんちゃんと付けてくれてるんですね!?!?」

先輩の凄いポッケからはみ出しているバットくん人形を見てあたしの顔がパァッと明るくなっていくのが、恥ずかしながら自分でも分かります。


あたしがそう言うと、先輩は少し不貞腐れながらも『なんとなくだよ!』とか言って怒ってらしゃってて…それもまた面白くて、
だからまた一人でクスクスと笑ってしまうんですよね。


「嬉しいです」

ニンマリと嬉しそうに奏音が笑うから、ちょっと蓮二も困り顔。



「あ!」

するとまた再び奏音が声を上げて。


…今度は何だよ。とでも言いたげな表情をするのは彼。


何となくですけど。

今日一日の出来事を思いだしてしまったのですが…巻き戻しをして巻き戻しをしてみると、


ちょっと不可解な所がありまして、ですね?



あの時…、

確か京香さんや隼人くんが来られる前。


先輩、あたしに何か…




「言い掛けてましたよね?」

「?」


案の定、頭の上に疑問符をポン、ポンと浮かべている蓮二。


「…えーと、あのですね。

確か…植物園に入ったばかりの、京香さん達が来る直前です!!」


何故この女は力強く握り拳を作ってそんなことを言っているのかに対しては謎だが、言っている事は事実。だったりする…


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